軽井沢の山荘(1962)
軽井沢の山荘の意匠設計を読み解く
日本のモダニズム建築を代表する建築家の中でも、住宅を多く手掛けた吉村順三氏が、自身の別荘して建てた小さな山荘である。
三方をせせらぎに囲まれた、小高い丘の上にひっそりとたたずむ。
RCの箱の上部に片流れの木造が乗っている。
2階の居間は大きく張り出し、南西に向く大きなガラス戸や雨戸などは全て戸袋に引き込める構造となっている。
窓辺に立つと空中に浮かんでいるような不思議な感覚になるという。
近年世界的なムーブメントとなっているのが「タイニーハウス」である。「断捨離」ブームに続き「ミニマム」な生活が注目されて生まれた新しい流れだ。
吉村順三氏が軽井沢に自らの別荘として建てたこの山荘は、まさに今流行りの「タイニーハウス」ではないか。
ミニマムなスペースに最低限のユーティリティーと、自然を取り込んだ贅沢なリビング
に建築家の高い美意識を感じる。
「この樹の上で、鳥になったような暮らしのできる家をつくろうと思いついた」と、吉村順三氏は山荘のデザインコンセプトを述べている。
建物自体は極め質素でシンプルな作りであるがディーテールに、建築家のこだわりが見える。自身の別荘ということもあり、ある意味実験住宅のようにも思えるが、楽しんで設計したのではないだろうか。形として現れるディーテールの裏にある上位概念の一貫性が高く評価される所以であろう。
参考書籍:吉村順三のディーテール 彰国社
コメントを残す