兵どもが夢のあと 黒川紀章(デザインの景色シリーズVol.4)

中銀カプセルタワービル(1972)

中銀カプセルタワービル(1972)の構造解説

カプセルタワービルの意匠設計を読み解く

黒川紀章設計の中銀カプセルタワービルは、世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅である。高度経済成長の時期へ向かった時代に、日本から発信されたメタボリズム運動の代表的な作品だ。
ドラム式の洗濯機を積み重ねたような特徴的な外観は、メタボリズムの設計思想を明確に表現している。ビジネスマンのセカンドハウス・オフィスとして想定されたその内装は、ベッド、エアコン、冷蔵庫、テレビ、収納などが作りつけで完備されているが、洗濯機はない。

虎ノ門の事務所に通っていた頃に銀座8丁目に顧客の事務所があり、このビルの前をよく通った。
変わったデザインだと思っていたが、カプセルがそれぞれシャフトに連結されているとは知らなかった。
このカプセルは交換可能に設計されていたのだが、現在まで一度も交換されたことはないという。
近年、老朽化のためにカプセル取替計画が検討されたが、コストの理由で住民の理解が得られず取り壊しの方向らしい。建設当時は宇宙船の部屋のような最先端のユニットハウスとして脚光を浴びたのであろうが、残念な話である。
設備は当然レトロ感満載だが、プロダクトとしてのカプセルには今でも魅力的に感じる。
メタボリズムの代表作品として産業遺産に登録してもらえないものだろうか。
寝るだけの簡易な宿泊施設としての「カプセルホテル」は、今や各地に存在して市民権を得ており、付帯設備もかなり充実してきているが、このような設備は他に見ない。
中銀カプセルタワービルの社会実験は、ユニットバスやユニット家具の進化につながっているようにも思える。
写真を見ながら、ドローンで空から飛んできたカプセルがビルにドッキングするアイデアが浮かんだ。

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