GUIデザイン(意匠出願)の研究 1

GUI(グラフィックユーザーインターフェース)デザインの意匠出願は、独特なデザインを保護し、ビジネス上の競争力を高める上で非常に重要です。
令和元年の意匠法改正によりGUI単独での権利取得が可能になりかなり使い勝手が良くなりました。
当社でも多くの特許事務所様の図面作成をサポートさせていただいておりますが、そのポイントを以下にまとめました。

令和元年の意匠法改正のポイント

 意匠法においては、従来、物品のみを保護の対象としていたが、令和元年の意匠法改正により、新たに画像を意匠と認め、物品から離れた画像それ自体も保護の対象とされました。 

当該意匠法の改正以前は、平成18年の意匠法改正で、物品の操作の用に供される画像を物品の部分の意匠として保護の対象とするなど、伝統的に物品の部分としての画像を含む意匠として保護してきました。 

したがって、令和元年の意匠法改正以降、意匠登録出願人が画像を含む意匠について意匠登録を受ける方法には、大きく以下の2通りがあります。 

(1)画像意匠(物品から離れた画像自体)として保護を受ける方法 

(2)物品又は建築物の部分としての画像を含む意匠として保護を受ける方法 

上記(1)は、画像が表示される対象を問わないものであり、上記(2)については、物品又は建築物と一体的に創作された画像を保護するものであります。 

但し、保護の対象となる画像は、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限ると定義しています。 

よって、以下の(1)又は(2)の少なくともいずれか一方に該当する画像に限り、意匠法上の意匠と判断することになります。 

(1)機器の操作の用に供される画像(操作画像) 

(2)機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(表示画像) 

例えば電化製品の3Dオブジェクト等の仮想的なものは、ここでいう「機器」に該当しません。 

また、映画やゲーム等のコンテンツについては、物品の部分としての画像を含む意匠を構成するものとは判断されません。

物品又は建築物と一体的に創作された画像の意匠においては従来の意匠図面の構成と同じのためここでは省略します。

GUIデザイン(画像意匠)の意匠出願における重要ポイント

  1. 意匠登録の対象となるGUIデザインの明確化
    • 表示される内容:
      • アイコン、ボタン、メニュー、ウィンドウ、背景画像、操作画面全体のレイアウトなど、表示されるデザイン要素を特定します。
      • アニメーションやトランジションなど、時間経過に伴う表示の変化も対象になります。
    • 機能・用途:
      • そのGUIがどのような目的で使用されるか、機能を明確に記載します。
        (例:情報表示用画像、コンテンツ視聴操作用画像、取引用画像、学習用画像、音量設定用画像、数値入力用画像 など・・・ )。
    • 新規性・創作性の判断:
      • 既存のデザインとの差異を明確に説明し、新規性および創作性を主張する必要がある場合は特徴記載書を提出することも出来ます。
      • 類似のデザインが既に公開されていないか、徹底的に調査しましょう。
  2. 出願書類の作成
    • 図面:
      • 画像が平面的なものである場合は【画像図】を用いて意匠登録を受けようとする画像を表します。画像が立体的なものである場合は、【画像正面図】、【画像平面図】、【画像左側面図】等、【画像○○図】を用い、意匠登録を受けようとする画像を表します。
      • 画像意匠全体ではなく画像の一部について意匠登録を受けようとする場合は、意匠登録を受けようとする部分」の形状等、「意匠登録を受けようとする部分」の画像全体における位置、大きさ、範囲及び「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」の境界が明らかとなるよう表します。
      • カラー表示が必要な場合は、カラー図面とすることも出来ます。
      • 図面の表現方法(線画、写真、レンダリングなど)は、規定に沿って適切に選択します。
      • アニメーションを含む場合は、時間経過に伴う変化を理解できるような図面構成を検討します。【変化した状態を示す画像図1】【変化した状態を示す画像図2】・・・
    • 意匠の説明:
      • 意匠登録を受けようとする部分の特定に必要な場合は、「意匠の説明」の欄に意匠登録を受けようとする部分を特定するための説明を加えます。
      • 必要に応じて図面だけでは伝わりにくい意図やコンセプトを補足しましょう。
      • 指定された様式に沿って、記載します。
    • 願書:
      • 出願人情報、意匠に係る物品、意匠分類などを正確に記載します。
      • 必要な書類を全て添付し、提出手続きを適切に行います。
  3. 新規性喪失の例外規定の活用
    • 公知:
      • 出願前にGUIデザインを公開してしまった場合でも、一定期間内であれば「新規性喪失の例外」を適用できる可能性があります。
      • 適用条件、手続き、証拠書類などを確認し、適切に手続きを進めましょう。
  4. 類似意匠の検討
    • 類似範囲:
      • 自身のGUIデザインと類似する可能性のあるデザインを洗い出します。
      • 類似範囲を考慮し、権利範囲を明確化します。
    • 関連意匠:
      • 複数のGUIデザインを関連意匠としてまとめて出願することも検討できます。
      • デザインのバリエーションを包括的に保護するのに有効です。
  5. 権利行使の戦略
    • 侵害判断:
      • 登録されたGUIデザインと類似するデザインが市場に出回っていないか、定期的に監視します。
      • 侵害が疑われる場合は、専門家(弁理士など)に相談し、適切な対応策を検討しましょう。
    • ライセンス:
      • 自社で権利行使するだけでなく、他社にライセンス供与することも検討できます。
      • ライセンス契約により、収益化を図ることも可能です。
  6. 国際出願の検討
    • 外国での保護:
      • 海外でのビジネス展開を考えている場合は、海外での意匠登録も検討しましょう。
      • ハーグ協定を利用することで、複数の国へまとめて出願できます。
    • 各国の制度:
      • 各国の制度や要件は異なるため、事前に十分な調査が必要です。

GUIデザインの意匠出願で特に注意すべき点

  • 技術的な制約:
    • GUIデザインは、技術的な制約を受けることがあります。画面サイズ、解像度、表示能力などを考慮する必要があります。
  • ユーザビリティ:
    • デザインの美しさだけでなく、ユーザビリティ(使いやすさ)も重要です。
    • 意匠登録によって、ユーザビリティを損なわないように注意が必要です。
  • 変化するトレンド:
    • GUIデザインのトレンドは変化が激しいです。
    • 出願するデザインは、将来性を見据えて慎重に選択する必要があります。

専門家への相談

  • GUIデザインの意匠出願は、専門的な知識と経験が必要です。
  • 弁理士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。

まとめ

GUIデザインの意匠出願は、技術的な制約、ユーザビリティ、トレンドの変化などを考慮しながら、慎重に進める必要があります。専門家のアドバイスを受けながら、戦略的に権利取得を進めることが、ビジネス上の成功につながります。

参考資料 
特許庁発行の意匠法における「画像を含む意匠」に関する審査基準をまとめました。

1. 画像を含む意匠の概要

  • 意匠法改正により、物品だけでなく画像自体も意匠として保護されるようになった。
  • 画像を含む意匠には、以下の2種類がある。
    • 画像意匠: 物品から離れた画像自体を保護する。
    • 物品等の部分に画像を含む意匠: 物品や建築物の一部として画像を保護する。

2. 審査における基本的な考え方

  • 審査官は、画像を含む意匠を審査する際、通常の意匠審査基準に従う。
  • 画像意匠と物品等の部分に画像を含む意匠とでは、審査基準が一部異なるため、まずどちらの意匠かを認定する。

3. 意匠法の保護対象となる画像

  • 画像意匠:
    • 画像を表示する物品や建築物を特定せず、画像自体を保護する。
    • 機器の操作に供される画像(操作画像)または機器が機能を発揮した結果として表示される画像(表示画像)に限る。
    • 映画やゲーム等のコンテンツは対象外。
  • 物品等の部分に画像を含む意匠:
    • 物品に記録され、表示部に表示された画像で、以下のいずれかに該当するもの。
      • 物品の機能を発揮させるための操作画像
      • 物品の機能を果たすために必要な表示画像
    • 建築物の場合も同様。

4. 意匠登録出願における願書及び図面等の記載事項

  • 画像意匠:
    • 「意匠に係る物品」欄に画像の具体的な用途を記載する。
    • 「意匠の説明」欄に、画像の用途を理解を助ける説明を記載する。
    • 図面は、平面的なら【画像図】、立体的なら【画像正面図】などを用いる。
  • 物品等の部分に画像を含む意匠:
    • 「意匠に係る物品」欄に、画像が表示される物品の名称や建築物の用途を記載する。
    • 「意匠に係る物品の説明」欄に、物品の使用目的や状態を記載する。
    • 図面は、物品や建築物を表し、画像の位置や範囲を明確にする。

5. 一意匠一出願の要件

  • 一意匠一出願の原則に基づき、複数の意匠を一つの出願に含めることはできない。
  • ただし、組物の意匠や変化する画像など、例外的に一意匠と認められる場合がある。
  • 審査官は、画像の性質を踏まえ、以下の点を考慮して判断する。
    • 「意匠に係る物品」欄の記載
    • 図面等の記載
    • 形状等の一体性、機能的な一体性
    • 変化する画像

6. 画像を含む意匠の登録要件

  • 意匠登録を受けるためには、意匠法に定められた全ての要件を満たす必要がある。
  • 主な登録要件は以下の通り。
    • 工業上利用することができる意匠であること
    • 新規性を有すること
    • 創作非容易性を有すること
    • 先願意匠の一部と同一又は類似の後願意匠ではないこと
  • 工業上利用することができる意匠:
    • 画像意匠は、操作画像または表示画像である必要がある。
    • 物品等の部分に画像を含む意匠は、物品や建築物の一部を構成する画像である必要がある。
    • 意匠は具体的でなければならない。
  • 新規性:
    • 公知意匠と同一または類似する意匠は、新規性を失う。
    • 公知資料に掲載された画像も、新規性判断の基礎となる。
  • 創作非容易性:
    • ありふれた手法や軽微な改変で創作された意匠は、創作非容易性を満たさない。
    • 当業者が容易に創作できる意匠は、創作非容易性を満たさない。
  • 先願:
    • 先願の意匠と同一または類似する意匠は、登録されない。

7. 先願の意匠と類似するものでないこと

  • 先願の意匠と類似する意匠は、登録されない。
  • 先願の意匠が物品等の部分に画像を含む意匠で、後願が画像意匠の場合、先願の意匠と後願の意匠が類似しない場合でも、先願の意匠の一部と後願の意匠が類似する場合は、登録されない。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/shinsa_kijun/document/index/isho-shinsakijun-04-01.pdf