サヴォア邸 歴史を変えたピザボックス(デザインの景色シリーズVol.9)

近代建築の5原則を読み解く

「住宅は住むための機械である」と語り、近代建築の5原則(ピロティ・連続水平窓・自由なファサード・自由な平面・屋上庭園)を提唱したル・コルビュジエの代表作。
パリ郊外に竣工され、近代建築の5原則全てが反映されている
建物として有名である。特にピロティと2階部分の水平横長の窓はその構造設計上の特徴をよく表している。
近代建築の構造原理である「ドミノシステム」が採用されている。

ル・コルビュジエによる、近代建築の構造原理である「ドミノシステム」の考案はある意味建築の歴史を変えたのではないか。
鉄筋コンクリートを用いたドミノシステムと、伝統的な木造建築の技術が融合して20世紀に
主流となるラーメン構造が進化したのだと個人的には推測している。
しかし、中世以降のセクシーな建造物が多いフランスにおいて、全く色気のないこの建造物はある意味潔い設計である。
外観のセクシーさよりも、生活を楽しむことにフォーカスして計画されている。
今でこそディーテールの完成度を上げてシンプルな中にセクシーさを埋め込むことに成功しているが、当時はかなり苦労したのではないかと考える。
注目したのは車で乗り付けることを前提に、ガレージを室内に設けていることである。
車のアプローチであったり、エントランスであったり、ピロティがとても良く機能している。
まさに「カーマニアのための週末住宅」である。
施工主がアルファロメオの赤いスポーツカーを横付けする風景が目に浮かぶ。
そんな情景は、この無機質な建物ととてもバランスが良い。
建物ではなく人やその持ち物が装飾で、総合的に魅力的な空間を演出しているとしたら非常に共感できる。